モーターサイクルチェーンは6種類の部品で構成されております
※ノンシールチェーンは5種類
このように、モーターサイクルチェーンはたくさんの部品の集合体です。120L(リンク)のシールチェーンは840個の部品から作られ、その中で1つでも不良部品があれば不良製品になり、極めて高い品質管理レベルを要する工業製品です。
RKチェーンは3種類のジョイントタイプがあります。
ジョイントプレート圧入不要のクリップジョイント。プライヤーのみで取付可能です。取付は簡単ですが、ジョイントプレートを圧入していないため構造上強度はチェーン本体よりも劣ります。
一般的に小型排気量向け、オフロード向けに採用しています。
クリップは必ずチェーン進行方向に背の丸い側(切欠けの無い方)が来るようにセットをしてください。
RKのクリップジョイントは主にフラットタイプを採用していますが、一部オフロード用銘柄*1にクリップをより外れにくいベントタイプを採用しています。
挿入するクリップは微妙に湾曲しています。
膨らんでいる方を表にして挿入してください。
クリップのばねの力でジョイントプレートをしっかり押さえながら、クリップ自身もしっかり固定され、外れにくい設計になっています。
*1→520MXU
ジョイントプレートはチェーン専用ツールを使用して圧入。ジョイントピン先端もチェーン専用ツールを使用して拡げる為、取付には必ずチェーン専用ツールが必要になります。取付に専用ツールを必要とするが、ジョイントプレートの圧入やピンのカシメをしっかり実施しているため、チェーン本体と同等の強度を持っています。
ジョイントプレートの圧入しろ(ピンの出)やフレアカシメ径はチェーンの銘柄別に設定があります。シールチェーンの性能を最大限発揮するシールのつぶし量を想定した圧入しろ(ピンの出)になっているので、必ずご確認の上、作業を実施してください。
日本国内向けRK製品ではこの様なジョイントタイプは設定はございません。海外メーカーでの設定はございます。なお弊社チェーン専用ツールである90ツールではこのジョイントタイプのカシメ作業は行えません。
ジョイントには互換性が有りません。必ずチェーン本体と同銘柄のジョイントをご使用ください。
銘柄違いでピン径や長さ、プレートの厚さ違いや、シール違いなど大きな変化点がございます。万が一使用されますと破断の可能性が大きいこと、局部伸びが発生するなど非常に危険です。
一度抜いたジョイントピンやジョイントプレート、カットした部分のプレートなどは絶対に再利用はしないでください。
ドライブチェーンは各部品が圧入された部品の集合体で強度を保っております。再利用した場合、嵌合力が低下し分解して破断します。
RKのジョイントと一緒に入っている小さな袋(RKでは”からし袋”と呼んでいます)はチェーングリースが入っています。忘れずにジョイントの継手ピンとシールに塗布してください。
チェーンサイズと銘柄呼称とは??
RKチェーンの銘柄呼称には三つの意味が含まれます。
サイズ | ピッチ[mm] | ローラーリンク内幅 | ローラー径 | |
---|---|---|---|---|
415 | 4/8 [inch] x 25.4[mm/inch] = 12.700[mm] | 4.76 | 1.5/8 [inch] x 25.4[mm/inch] = 4.76[mm] | 7.77 |
420 | 6.35 | 2.0/8 [inch] x 25.4[mm/inch] = 6.35[mm] | 7.77 | |
428 | 7.94 | 2.5/8 [inch] x 25.4[mm/inch] = 7.94[mm] | 8.51 | |
520 | 5/8 [inch] x 25.4[mm/inch] = 15.875[mm] | 6.35 | 2.0/8 [inch] x 25.4[mm/inch] = 6.35[mm] | 10.16~10.30 |
525 | 7.94 | 2.5/8 [inch] x 25.4[mm/inch] = 7.94[mm] | 10.16~10.30 | |
530 | 9.53 | 3.0/8 [inch] x 25.4[mm/inch] = 9.53[mm] | 10.16~10.30 | |
630 | 6/8 [inch] x 25.4[mm/inch] = 19.050[mm] | 9.53 | 3.0/8 [inch] x 25.4[mm/inch] = 9.53[mm] | 11.96 |
チェーンの発明起源は欧米であり、インチ表記基本となっております。チェーンサイズ3桁のうち、最初の1桁はピッチです。それに続く2桁はローラーリンク内幅です。例外として428の”8″はローラー径から来ています。428サイズはモーターサイクルチェーンの開発歴史の中で生まれた、モーターサイクルチェーンのみの規格だからです。チェーンの耐久性を上げるため、運転時スプロケットの歯に常時当てられるローラー径を大きくすることは手法の一つです。1980年代の車種で一部の大排気量マシン採用された532サイズも同じ考え方です。532サイズのローラー径は11.96[mm]です。
RKのラインアップについてはこちらに詳しく紹介しています。
車種により適合するチェーンが異なりますので、必ず車種適合表標記通りにチェーンを選定してください。
電着黒(ED.BLACK), 電着金(ED.GOLD)や銀(SILVER)は錆対策のためプレートのみならず、大気に触れる全構成部品に表面処理を施しています。金(GOLD)は錆対策のため、チェーン外プレートと内プレートに表面処理を施しています。銀(NICKEL)は錆対策のため外チェーンプレートのみに表面処理を施しています。
RKのカラーラインアップについてはこちらに詳しく紹介しています。
チェーンの伸びはピン(軸)とブッシュ(軸受)が摩耗することで起こる現象です。磨耗で削れた分だけピンの軸が引張り方向にズレます。このズレの積み重ねがいわゆる「伸び」となります。ピンあたり 0.1[mm]の伸びは 120L チェーンに 0.1 [mm] x 120L = 12 [mm]の伸びにつながります。シールチェーンの使用限界は1.0%, 120L = 19.05 [mm]
モーターサイクルチェーンの元をたどれば産業用JIS規格のローラーチェーンです。従って、伝統的なモーターサイクルチェーンはシールのないノンシールチェーンです。標準チェーン、スタンダードチェーンとも呼ばれています。モーターサイクルチェーンの技術発展が進み、RKでは1975年にシールチェーンが開発されました。
シールチェーンはチェーン内部(ピン・ブッシュ間)のグリースをシールリングで密閉していますので、耐摩耗伸び性能が非常に優れています。RKのシールリングについてこちらに詳しく紹介しています。
グリース保持能力が弱いため、使用距離使用距離に比例して伸びます。使用限界を初期長さより+2.0% としています。
例:チェーンサイズ420 100L = 1,270[mm], 2.0% = 25.4[mm]ピン一本当たり摩耗量 = 0.25[mm]
シールリングによって封入されているグリースが存在する限り初期伸び後はほとんど伸びを見せません。但し、使用限界に近づけると伸びを見せるようになります。従って、シールチェーンが伸びを見せるようになったらチェーンの交換時期になります。
使用限界は初期長さより+1.0% としています。
例:チェーンサイズ520 120L = 1,905[mm], 1.0% = 19.05[mm] ピン一本当たり摩耗量 = 0.15[mm]
こちらでみてわかるように、シールチェーンの方が使用限界の管理が厳しいです。ノンシールチェーンは平均に伸びていきますが、シールチェーンが伸びを示すのは、どこかのシールがだめになっていたり、グリースがなくなっていたり、局部伸びを示す傾向にあります。
またシールチェーンは主に大排気量に使われるため、少しでも伸びを示した場合すぐさまチェーンを交換しましょう。
汚れを放置すれば錆につながり、チェーンの性能や寿命に影響を及ぼします。錆や腐食が進行すると、腐食部分を起点とし破断に至ります。
シールチェーンの場合、錆が原因でシールリングにダメージを与える恐れがあります。また、一度発生したサビは落とすことはほぼ不可能です。
錆発生の主原因は
1. 融雪剤散布後に走行したことがある。
2. 海岸線や海岸付近を走行したことがある。
3. 雨天走行後にチェーンの注油を行わなかった。
4. チェーンメンテナンスを長期にわたり行わなかった。
チェーンが伸びるとピンとピンの間隔(チェーンピッチ)が開くようになり、スプロケットのピッチと一致しなくなります。リアスプロケットのチェーンをつまんで引っ張ったときに浮いてしまうと、チェーン伸びが起きている証拠です。ノンシールチェーンは使用距離に比例して伸びるため、チェーンの伸びを確認するのに簡単で有効な方法です。チェーンが伸びすぎると走行時にチェーンがスプロケットの歯先に噛み込まず、歯飛びする現象が起きます。
オフロード車によくありますが、チェーンがチェーンスライダーなどとの接触により、プレートの上端と下端が摩耗します。これによりチェーンの強度が減少していきますので、顕著な場合は交換をしましょう。RKのオフロードチェーンの利用限界は下記になります。
サイズ | プレート高さ摩耗限度[mm] |
---|---|
520 | 13.5 |
420/428 | 10.8 |
チェーンが伸びすぎるとスプロケットに噛み込む際、ローラーがスプロケットの歯先に乗り上がってしまいます。本来スプロケットの歯底の広い面積に着座するはずのローラーが面積の小さいスプロケットの歯先に乗り上げた場合、ローラーに作用する面圧が増大し、その繰り返しの負荷によってローラーが破損します。
ピン・ブッシュ間グリースがなくなり、ピンとブッシュが直で摩擦していて、焼き付きが起きている現象です。ピンの焼き付きは局部ですが、焼き色がつくほど大変高温で起きます。チェーンを分解するとピンに焼き色がつくことが確認できます。固着が起きると極めて危ない状態になります。走行を直ちにやめ、チェーン交換をしてください。
ピン回りという現象は固着がさらに悪化した状態です。ピン・ブッシュ間のグリースがほぼ無くなった状況でピンとブッシュの摩擦がかなり進展し、ピンがひどく焼き付いている状態で、チェーンがスプロケットに噛み込む際、ピンと外プレートの嵌合力が負けて無理やりにピンが回された証拠です。ピン回りが起きると極めて危ない状態になります。走行を直ちにやめ、チェーン交換をしてください。
プレート外周部からピンに向けクラック(割れ)が発生している現象です。ヒートクラックは熱疲労とも呼ばれる現象で、原因は金属接触です。
1. チェーンスライダー(スイングアームとドライブチェーンの間にある軟質の保護器具)の摩耗でスイングアームとドライブチェーンが直接接触する。
2. フレームやバイクの金属でできている構成部品とドライブチェーンが接触する。
その状態で加熱・冷却を交互に受け、接触箇所で焼きなましによる強度低下の結果です。
チェーンが伸びることにより本来歯底で噛合うチェーンのローラーが歯先に当たりながら回転してしまっている。スプロケットは加速度的に減り、伸びすぎたチェーンはスプロケットの歯先に乗り上げて外れてしまう。最悪の場合は歯先への乗り上げと同時にチェーン切断に至ります。
チェーンを新品に交換してもスプロケットが減ったままでは、上記と逆の症状でローラーが歯先に乗り上げ、外れる恐れがある。チェーンの伸びや、スプロケットの摩耗による噛み合わせ不良の状態をピッチエラーと呼び、チェーン駆動では大きなトラブルの主な原因です。
チェーントラブル(駆動系トラブル)を防ぐためにも、チェーン・前後スプロケットの3点同時交換を推奨します。